立ちどまるから見えてくる

奥入瀬‐2025年鳥類調査①

日中の気温が上がり始めました。奥入瀬渓流内ではカタクリやキクザキイチゲ、オトメエンゴサクといった春のお花が咲き始め、樹々は芽吹きの時期を迎えています。全ての生命たちが待ち望んでいた「春」がようやく奥入瀬渓流に訪れました。

春と言えば、歓びの季節。そして恋の季節。
奥入瀬渓流にも夏鳥が少しずつ入って来ています。
(夏鳥:春に、より南の地域から渡来して繁殖を行い、秋にはまた南の地域へと渡っていく種のこと)

毎年、この時期になるとルーティンである鳥類調査を行っております。
目的としては、①奥入瀬渓流の鳥類生息状況を把握する②データを取り続けて環境変化をモニタリングしていくこと。
鳥類調査の方法はいくつかありますが、私たちはスポットセンサス法という手法で調査を行っています。奥入瀬渓流内に複数個所の定点観測位置を設け、その場所で一定時間、鳥類を観察し、その環境での出現種や個体数を記録する調査方法です。GWの忙しい時期に重なり、結構大変ですが、調査データは継続し続けることによって意味が出てくるので、気合を入れて毎回頑張っております(^^)

さて、今回調査を実施した日(4/26)は朝の最低気温は1℃。
久しぶりに冷え込んだ寒い朝でした。
朝5時から調査をスタートし、奥入瀬渓流全域を移動しながら野鳥観察と季節の変化を記録。
早朝はカモシカやテンといった野生動物に出会うチャンス(ツキノワグマには会いたくないですがw)も多いので、鳥だけではなくエリア全体を広~く見ながら調査を進めます。

↑ガイド仲間を誘っての野鳥観察。渡ってきたばかりの鳥たちは囀りが下手。「ん?」と頭を悩ませながら種を記録していきます。

この日、記録した鳥類の数は、トラツグミ、シジュウカラ、ヤマガラ、コガラ、ヒガラ、ゴジュウカラ、エナガ、ウグイス、センダイムシクイ、キセキレイ、ハクセキレ、カワガラス、ミソサザイ、オオルリ、キビタキ、カワラヒワ、コゲラ、アオゲラ、クロツグミ、アカハラ、イカル、ハシブトガラス、カケス、トビ、オシドリ、の25種。

↑一年中、奥入瀬にいる留鳥のミソサザイ。奥入瀬渓流のマスコット的キャラクター。とっても可愛い♡


子ノ口(十和田湖)では風が強まり、水鳥がいなかったので、やや少なめの記録となりましたが、キビタキの囀りを初認したり、オオルリの素晴らしいラブソングを間近でゆっくりと聞くことが出来ました。

そんな中、朝陽が奥入瀬の谷に差し込みはじめると….

↑逆光のシウリザクラが美しく輝いていました。
ピンク色の芽鱗にあたたかな朝陽の光が当たると、なんとも言えない美しい色合いに見えます。
この景色は奥入瀬渓流で樹々の芽吹きが始まったことを教えてくれる春の風物詩です。

足元には妖艶な色をしたシウリザクラの芽鱗が落ちていました。
この美しき外蓑を手に取り、光に透かして見るのもお勧めです!

↑展葉とともに落ちていくシウリザクラのピンク色の芽鱗。


早朝の鳥類調査は、静かな雰囲気の中、美しい鳥たちの囀りとともに小さな春をいっぱい見つける時間でもあります。
いつかこの”楽しみ”をツアーに出来たら良いなと考えています。

ネイチャーガイド:丹羽

◆鳥の世界の豆知識◆
囀り:主に雄が発する求愛やなわばり宣言の鳴き方。略語はSong
地鳴き:季節に関係なく、他個体との連絡などを目的とした鳴き方。略語はCall
ぐぜり:さえずりに似た小さな声(若鳥がさえずりを練習して過程で発する不完全なさえずり)